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2025

2025年「植物花粉の急速な目覚めを支える巨大タンパク質VPS13の発見」

花粉は植物の作り出すユニークな細胞で、雄しべでつくられて成熟した後は休眠している一方で、雌しべについた後は急速に成長して受精に向かって競争する、という動静相反する性質を併せ持っています。しかし、なぜブレーキ状態から急速に加速できるのか、という疑問はほとんど解明されてきませんでした。 この研究では、あらゆる真核生物で保存されている巨大リン脂質チャンネルタンパク質VPS13の一種を植物が応用して、花粉の急速な目覚めを可能にしていることを明らかにしました。VPS13は花粉が休眠状態から活性化するために必要で、さらにカルシウムシグナル伝達を受けて細胞分泌系を花粉細胞内で正しく局在させることで発芽へと導くことが示唆されました。

プレスリリース

https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/topic_20241202-1.html

論文

Tangpranomkorn et al (2025) “A land plant-specific VPS13 mediates polarized vesicle trafficking in germinating pollen” New Phytologist

2023

2023年「第二の生殖障壁因子SPRI2の発見」

植物の種間生殖障壁の原因となるタンパク質の第二弾目,Stigmatic Privacy 2(SPRI2)を発見しました.SPRI2はSPRI1と同様に,遺伝子を破壊することで異種の花粉管が雌しべに侵入するようになりました.SPRI2は転写制御因子タンパク質で,種間障壁を司るマスター因子であることが明らかになりました.さらに,SPRI2は核の中で液-液相分離と呼ばれる物理現象によって粒状の構造体を作って局在することが見出されました.このような構造体がどのような意味があるのかはまだ未知ですが,この構造体が種間障壁機能にとって必要であることも示されました.この発見はNature Plants誌に掲載されるとともに,朝日新聞などを含め多くのメディアに取り上げられました.

このように,まさしく「生殖障壁」を体現する分子が存在することは当初は予想外でした.この発見はNature Plants誌に掲載されるとともに,日本経済新聞などのメディアに取り上げられました.

プレスリリース

https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/topics_20231006-1.html

論文

Fujii, Yamamoto et al (2023) “SHI family transcription factors regulate an interspecific barrier” Nature Plants, 9, 1862–1873.

2022

2022年「自殖シンドロームの総説」

(図は理学部の土松先生の作成です)

植物は進化の過程で他殖性(他の個体の花粉で種子をつける)と自殖性(自分の花粉で種子をつける)を何度も行き来しています.「自殖シンドローム」とは,植物が自殖性になったときに(花粉媒介者が来なくなることなどで)花の大きさなど様々な形質が影響を受ける現象のことで,様々な植物種において共通の傾向が見出されています.今回,私たちが発見した異種の花粉に対するバリアメカニズム「生殖障壁」も自殖シンドロームによって影響を受けるということを初めて議論しました.

論文

Tsuchimatsu & Fujii (2022) “The selfing syndrome and beyond: diverse evolutionary consequences of mating system transitions in plants” Philosophical Transactions of the Royal Society B: Biological Sciences , 377, 1855.

2020

2020年「自家不和合性を抑制する回文構造」

シロイヌナズナは進化の過程で自家和合性になった植物です.おそらく氷河期に花粉媒介者が減った時期に自家不和合性が不利になり,自家和合性が一気に定着したのでしょう.私たちはシロイヌナズナで,自家不和合性の雌しべ側の決定因子SRKがただ壊れているだけではなくて,特殊な回文構造のような遺伝子配列を作りながら機能を失っていることを明らかにしました.この配列からは低分子RNAが作られていて,正常な機能をもったSRKがあったとしてもそれを抑えることがわかりました.このような回文構造があることで自家和合性の固定が一気に加速して,シロイヌナズナの環境適応に役割を果たしたと考えられました.

プレスリリース

https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/topics_20200317-1.html

論文

Fujii et al (2020) “Parallel evolution of dominant pistil-side self-incompatibility suppressors in Arabidopsis” Nature Communications, 11, 1404.

2019

2019年「SPRI1の発見!」

植物の種間生殖障壁の原因となるタンパク質Stigmatic Privacy 1(SPRI1)を世界に先駆けて発見しました.SPRI1遺伝子を破壊すると,異種の花粉管が雌しべに侵入するようになりました.このように,まさしく「生殖障壁」を体現する分子が存在することは当初は予想外でした.この発見はNature Plants誌に掲載されるとともに,朝日新聞などを含め多くのメディアに取り上げられました.

プレスリリース

https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/topics_20190702-1.html

論文

Fujii et al (2019) “A stigmatic gene confers interspecies incompatibility in the Brassicaceae” Nature Plants, 5, 731–741.

2016

2016年「自家不和合性進化の新モデル」

地球上の植物の半数以上が「自家不和合性」と呼ばれる性質をもっています.中でも,S-RNase型自家不和合性と呼ばれるものはメジャーですが,どうやってこのタイプの自家不和合性が進化してきたのかは謎に満ちています.この論文では,S-RNase型自家不和合性がどのように多様化したのか?について過去の文献を整理しつつ,新しい仮説を提唱しました.

Nature Asiaの記事

https://www.natureasia.com/ja-jp/nplants/interview/contents/6

論文

Fujii et al (2016) “Non-self- and self-recognition models in plant self-incompatibility” Nature Plants, 2, 16130.

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2025

Tangpranomkorn S, Kimura Y, Igarashi M, Ishizuna F, Kato Y, Suzuki T, Nagae T, Fujii S, Takayama S

A land plant-specific VPS13 mediates polarized vesicle traffickingin germinating pollen

In: New Phytologist

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2023

Kato, Yoshinobu; Tadokoro, Shun; Ishida, Shota; Niidome, Maki; Kimura, Yuka; Takayama, Seiji; Fujii, Sota

In depth amino acid mutational analysis of the key interspecific incompatibility transmembrane factor Stigmatic Privacy 1

In: 2023.

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2023

Fujii, Sota; Yamamoto, Eri; Ito, Seitaro; Tangpranomkorn, Surachat; Kimura, Yuka; Miura, Hiroki; Yamaguchi, Nobutoshi; Kato, Yoshinobu; Niidome, Maki; Yoshida, Aya; Shimosato-Asano, Hiroko; Wada, Yuko; Ito, Toshiro; Takayama, Seiji

SHI family transcription factors regulate an interspecific barrier

In: Nature Plants, 2023.

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2022

Tangpranomkorn, Surachat; Igarashi, Motoko; Ishizuna, Fumiko; Kato, Yoshinobu; Suzuki, Takamasa; Fujii, Sota; Takayama, Seiji

A land plant specific VPS13 mediates polarized vesicle trafficking in germinating pollen

In: 2022.

2022

Fujii, Sota

Plant physiology: ATP at the center of self-recognition

In: Current Biology, vol. 32, no. 18, pp. R962–R964, 2022.

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