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植物生殖の基礎メカニズムの研究

 「花粉」と聞くとアレルギーなどの不快な記憶が起こる方もいるかもしれません。しかし、花粉は植物の様々な工夫が秘められた細胞で、花粉と雌しべの細胞の相互作用は生物学的に独特な現象です。例えば、花粉は雄しべで作られますが、その後いつ雌しべに受粉して受精することができるのかわかりません。場合によっては、花粉媒介者によって非常に長距離を運ばれます。そのため、紫外線や乾燥など、さまざまなストレスに耐える性質を持ち合わせる必要があり、一種の休眠状態になっています。その一方で、雌しべについたあとの花粉は胚珠(卵細胞を含む器官)に向かって花粉管を伸ばし、受精を争う過酷なレースを競います。そのようにして速やかに花粉管を伸長したもののみが子孫を残すことができます。つまり、花粉は休眠性と爆発的な成長という相反する性質を併せ持っていないといけません。
 花粉は雌しべに付着したあとで、表面に纏っている花粉コートと呼ばれるタンパク質と脂質の混合物を雌しべに受け渡します。この花粉コートにはGlycine Rich Protein (GRP)と呼ばれるタンパク質主成分があり、その他にも雌しべに受け渡されるシグナル物質があるといわれていますが、それらの多くはまだ発見されていません。